maturimokei’s blog

俺たち妄想族

草引き

草引き

 


 草引きをしていると、彼らの戦略に気づく。

 根を地中深く強く張って、抜かれまいと抵抗するもの。茎の根本から折れてもなおそこに居続けようとする。こういう相手にはストレスが溜まる。

 逆にいとも簡単に根ごと引き抜かれるもの。抜く私も気持ちが良い。しかし、彼らは短い根がびっしり生えて土を離すまいと抱き抱えている。振っても振っても地面に叩きつけても土を離さない。諦めて庭の端に放っておくと抱き抱えた土を養分に新しい場所で根を張り始める。

 私が一番嫌いなのはワカメみたいなやつだ。あいつは根を張るわけでもなく、だらしなくのうのうと寝っ転がっているだけだ。全くやる気がない。叱咤したくなる。でも丸々と太ったやつをごそっと取れた時はちょっと嬉しい。が、力を入れすぎ、芝生の間に引っかかったのをちぎってしまった時は厄介だ。奴らはいくつに割れてもそれぞれが再生する。乾燥すればさらに厄介だ。薄っぺらくカリカリになり、迂闊に踏もうものなら、細かく砕け散って、次の雨が降れば、カップヌードルのように、それぞれが膨らむ。大っ嫌いだ。

 寄らば大樹の陰というのもいる。朝顔を植えたそのすぐ横に生えてくる。抜こうとしても朝顔の根も抜けてしまうので手をこまねく。ずるいやつだと思っても、彼らに言わせれば、朝顔こそ外から来て土地を実効支配しようとしているのであり、我々こそが先住植物だということになる。

 除草剤を撒けばという声もある。しかし、化学兵器を使うのは性に合わない。

 可憐に微笑む名も知らぬ一輪の花。まるで、手折らないでと懇願するようにも見える。殺風景な庭の癒しになるかとそのままにした私が愚かだった。翌年はあちこちびっしり生えまくりもうお手上げだ。

 芝生は土中の石を上に押し出し石の鎧で身を守る。芝刈り機が石を弾き嫌な音を立てる。その芝生にクローバーは渾然一体と絡みつき、人質にする。芝生を犠牲にしてちぎってもちぎっても、地下茎がどこまでも伸びている。彼らは目に見えない地下で深く手を繋ぎ、固く結ばれている。

 


 雑草たちのしたたかな生き残り戦略に学ぶことは多い。

 


2022・7・17