maturimokei’s blog

俺たち妄想族

イーロン・マスクの危険性

 イーロン・マスクTwitterを買収しようとしている。「表現の自由を守るため」だそうだ。Twitterはアカウント削除の基準が明確でなく、恣意的だと言うのだ。多くのフォローワーのいるアカウントが凍結されているとイーロン・マスクは言う。私はTwitterには詳しくないが、真っ先にその条件で頭に浮かぶのは、トランプ前大統領だ。彼は連邦会議所襲撃占拠事件を煽った咎でTwitterからアカウントを凍結された。トランプの信望者は多い。

 表現の自由とは、何でもかんでも、嘘も真実も表現する自由のみを指すのであろうか。自分の管理する場に、不適切な表現を禁じるのも表現の自由であろう。もし、イーロン・マスクが何でもかんでも言わせたいなら、そういうSNSを立ち上げれば良い。世界一の金持ちなんだから。金の力にあかせて買収して言うことを聞かすことで表現の自由が守れるとは、私は思わない。

電子式ミッション

以前に「プリウスのミッション」で書いた、ニュートラル位置に常に戻る電子式ミッションは、プリウスのみならず、ニッサンeパワー、三菱のプラグインハイブリッドにも使われていた。同じ構造なのは、社外品で供給元が同じなのかもしれない。

 私がこのミッションが良くないことを前回ブログで述べたのは、渋谷交差点母子死亡事故の直後に、私の知っている方が奥さんを誤って轢き殺してしまったのがきっかけで、2人が運転していたプリウスが、試乗マニアの私が50年間で違和感を感じた数少ない車の一つだったからだ。踏み間違えがなぜ起こったのか、そこにメーカーの責任はないのかという疑問があったからだ。ベストカーウェブでも誤発進の要因ではないかと調査をしていたのを見つけた。車専門雑誌もよくないミッションだと感じたのだ。

https://bestcarweb.jp/feature/column/108221/amp?prd=1

 トヨタの最新EVのbz4xは、押し込み回転式の新電子式ミッションを搭載した。間違ってチェンジすることが起こらないミッション構造だ。トヨタも現行の電子式ミッションがよくないことを認めたのだろう。

 

日本の安全保障の見直しを急げ

 これは敵基地攻撃能力の保有核武装について述べるものではない。むしろ逆である。

ロシアの蛮行は今までの日本の安全保障のあり方の間違いを露呈した。理性のある人間は戦争を起こしたりしない。理性がないから起こすのであり、理性のない人間は残念ながら存在する。ではどうするのかという具体策の立案を今迫られている。

 国内においては警察に防御のための銃の使用を認めている。理性のない国に攻められたとき、防御のための自衛隊出動もありうると思う。しかし日本は武力による国際紛争の解決を憲法九条により否定している。解決に武力を使わずどうやるのか。国際社会は現在経済制裁でロシアに臨んでいる。いわゆる兵糧攻めである。経済制裁により相手国の内部から政権を崩すのである。今の日本にそれは可能か。

 日本が国を守るために取り組まなければならない喫緊の課題を示す。

 

1 現在11%のエネルギー自給率の向上

 広い国土を持つロシア、カナダ、アメリカ、中国、ブラジル、オーストラリアは地下資源に恵まれる可能性は高く、実際そうである。ロシアが戦争を始めたのも、天然ガス重油が豊富だからである。それに比べ日本は国土が狭く、89%のエネルギーを輸入に頼っている現在、エネルギー兵糧攻めをされてもできる立場にない。せめてされない状態にしなければならない。そのために日本の自然を生かした地熱発電、潮力発電、水力発電の研究に国は力を入れるべきだ。特に地熱はすぐにでも利用できるが、国立公園に関する法律が弊害になっていると聞く。建屋のデザインを風景にあったものにする、小規模発電所を多数作るなどして美観を守りながらできるはずだ。ダムは自然破壊につながり、立退の問題もあるが、小規模水力発電の研究を進めれば、そうした問題も解決できるのではないか。

 エネルギー逼迫と言っても、安易に原発に頼るべきでない。関西電力は、東電の福島原発事故以来手の平を返してやめていた原発コマーシャルを、最近はカーボンニュートラルの掛け声に励まされ、喉元を過ぎたとばかりに子供まで使って再開した。電気自動車は都会の空気を美しくするが、発電のための汚れた空気や物質を地方や未来に追いやることで実現するものだ。事実通産省廃炉後の放射性廃棄物の処理を海外処理しようとしている。自分たちの貧困なイマジネーションが届かないという理由で、実際に貧困な人々に負担を負わせて幸せと言えるのか。東電の柏崎刈羽原発はテロ対策の杜撰さを指摘され稼働できない状態だ。放射性廃棄物を海外搬送中に海賊に奪われないとも限らない。ロシアの蛮行は、ミサイルで原発を攻撃し手に入れられることを証明した。現代の生活享受のために汚染された核廃棄物を子孫に残すという問題があるだけでなく、原発により、現代の生活自体がすでに犯され脅かされているのだ。原発に頼らない、日本の風土にあった発電を研究するために国防費を回すべきだ。

 

2 現在37%の食料自給率の向上

 外務省の2019年のデータによると、世界の小麦生産は中国25%、インド20%、ロシア13%、ウクライナ5%、ちなみに日本は0.1%だ。ロシアは経済制裁を受けてもエネルギーと食料があるから自給自足していける。未来のないロシアから次第に頭脳流出が始まりさらに国力は衰えるだろうが、兵糧攻めではロシアは滅亡しない。むしろますます儲けるのが中国だろう。中国は供給の減った世界に高値で小麦や石炭を売り、ロシアには製品を売り続ける。漁夫の利である。インドも追随する可能性が高い。

 日本のカロリーベースの自給率37%には贅沢品が含まれているだろうから、生きるための自給率ならもっと高いはずだし、高くできる。しかし、外国に攻められて港湾を封鎖されてすぐに休耕田から米が取れるとは思えない。むしろ常に余剰米を持ち、世界の飢餓地域に浄水器とともに放出し援助できる国になりたい。そうした世界に必要な国は結果として攻められにくい国になるのではないか。

 

3 ワクチン、新薬開発

 アメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中国は自前のコロナワクチンを開発した。ワクチンは国防のためのものだからだ。細菌兵器は国際条約で禁止されているが、条約を守る国が戦争を起こしたりしない。ワクチンを持たないと戦争ができないのだ。だから、ロシア、中国はアメリカのワクチンを買ったりするはずがない。自国で作る必要があるのだ。ノーベル化学、医学賞受賞者を輩出する日本がなぜ開発に遅れるのか。一つは基礎研究に国が補助をしないからだ。もともとそういう風土であったのかもしれないが、すぐ結果が出るものを求める姿勢は安倍政権の時に顕著になった。もちろん、日米安保アメリカが供給してくれるという安心があり、莫大な基礎研究費を節約できるという考えもある。しかし、私は疑っている。ワクチンが国防に関する限り、日本は開発を禁じられているのではないか、そうした密約があるのではないか。サンフランシスコ条約で、禁じられていた航空機の開発を再びできるようになったが、ワクチンはアメリカより早く開発しないという密約があるのではないか。ワクチンを持てば戦争を始められるからだ。私の杞憂妄想だと思いたい。

 ワクチンに限らず、医薬品の開発は国防上有効だ。日本しか作れない薬を作ることが、資源の少ない日本が兵糧攻めできる少ない方法の一つだ。井上ひさしも50年前に書いた『吉里吉里人』で医学立国を国防として提案していた。日本語が医学の基準となる世界を彼は夢見ていた。

 

4 戦闘機購入ではなくドローン、巡航ミサイル開発

 戦闘機は人が乗る。ゆえに撃墜されれば人は死ぬ可能性が高い。しかしドローンは違う。戦闘機は高価だ。安倍首相は2018年に、1機96億円のロッキード35Aを147機買うことを閣議決定した。しかし、ドローンだと1機1億円でもその100倍、1000万円なら1000倍買える。戦闘機は飛行場を破壊されれば飛べない。着陸できない。事実ロシアはウクライナの飛行場を破壊した。しかし、ドローンならどこからでも飛ばせる。戦闘機の優位性は航続距離の長さである。しかし、専守防衛の観点から言えば遠くまで行くのは矛盾である。領海をカバーできる程度の艦船攻撃用の巡航ミサイルで十分ではないか。

 ウクライナ侵攻で分かったことは、ミサイルで街を破壊するだけでは征服したことにならないということだ。兵士が入って市長を拘束するなり、市庁舎を占拠することをロシアは目指している。ならばドローンは航続距離が短くても戦車や車両の侵入を阻止するのに有効ではなかろうか。大都市には地下鉄がある。停電時でも動けるバッテリーを備えた車両を走らせドローンをあちこち配備すれば良いのではなかろうか。有人機は侵略の象徴、専守防衛なら無人機で良い。 

 現在ドローン技術で圧倒的優位に立っているのは中国だ。日本のシェアは世界の数%に過ぎない。しかし、日本の技術力ならきっと素晴らしい国産ドローンができる。次期F X開発費をドローン開発にまわそう。そして平時は被災地の物資運搬に役立てよう。日本は毎年災害に見舞われているのだから。

 

5 ドクターヘリの増産

 ミサイルを撃ち込まれたからといって全員が死ぬわけではない。負傷者の方が多い。負傷者をいかに早く救うかが重要だ。戦闘機は役に立たない。どこにでも着陸できるヘリコプターが必要だ。戦争でなくても、災害時や平時でも役立ち、無駄にならない。

 

6 情報収集能力の向上

 数で劣勢のウクライナの善戦は、米英の与えるロシア軍情報によるものが大きいとされる。旗艦モスクワを二発の巡航ミサイルで仕留めたとされるのもそのおかげである可能性が高い。相手の作戦がわかれば機先を制することができる。GPS補完機である「みちびき」は傾斜静止軌道をとり、日本上空に長くとどまることができ、2023年には7機体制となる。すでにカメラが仕込まれているのか私は知らないが、アメリカの衛星のような高性能カメラを持つものがあれば良い。

 しかし、いくら情報を得ていても、サイバー攻撃を受け、情報が伝わらなければ意味がない。サイバーセキュリティは必須である。

 

7 情報教育

 残虐なウクライナに迫害されたロシア人を守るために、ロシアはファシズムに対する正義の戦いをやむなくしている。ウクライナからはロシアに救いを求めて人々が脱出している。ウクライナは、自らの街をまるでロシアが破壊したかように自作自演で壊すだけでなく、ロシアに侵攻しロシアの子供や妊婦を爆撃している、とプーチンは言う。それを信じているロシア人、中国人は多数いる。国営放送が発表するプーチン支持率80%超は眉唾だが、実際に支持している人はたくさんいるのだろう。崩壊した国の経済を復興させ、失業率を改善し、再び国際社会での発言権を増すまでに国を立て直したことで人気を得たのはまさにヒトラーと同じ道を歩んでいる。プロパガンダ多用もまさに同じだ。偏った情報で戦争に駆り立てられたのは、70年前の日本も同じだった。「それは事実か」「なぜそう言うのか」「それを続けることは人類を幸せにするか」問い続ける姿勢が大切だ。問い続ける習慣を小さい頃から学校でつけることは、教育の目的でもある。それは他国や自国のプロパガンダに左右されず、正しい政府を支持し、誤った政府を転覆する、または誤った政府を作らない国民を育てることであり、それこそが最強の国防であり安全保障だからだ。

八と熊の政治談義 ウクライナ危機

八 熊さんよう。ちょっとわかんないことがあるんだ
熊 なんだい?
八 プーチンの命令でウクライナの人がたくさん殺されているじゃない。どうしてプーチンは警察に捕まらないの?
熊 チャップリンも言っただろ。一人殺せば犯罪者だが、百万人殺せば英雄だって
八 戦争を起こせば英雄だってこと?
熊 強烈な皮肉だな
八 ロシアの人はプーチンを英雄だと思っているの?
熊 サンクトペテルブルクを初め各地で反戦デモが起こっているが、何千人も逮捕されている。
八 逆じゃない?まともな人がどうして捕まる?
熊 警察も軍隊も側近も、プーチンに逆らうと命の危険があり、起こっていることを情報で流すと嘘を言ったということで牢屋行きになり逆らえないんだ。もちろん、プーチン支持の人もたくさんいるだろう
八 人道回廊を作るって言ってるよ。プーチンも人道を大切しにしているのじゃないの?
熊 「人道」は名ばかり。ロシアや手下のベラルーシに行く道しか用意しない
八 帰ってこられるの?人質じゃないか
熊 プロパガンダに利用するんだ
八 なにそれ?プロパンガスなら知ってるけど
熊 まず、国境で映像を撮り「ウクライナの迫害からロシアに救いを求めて逃げてきた人たち」という説明をつけ国内で流すだろう
八 あべこべだろ
熊 次に、国内の「人道回廊」を歩いている人たちを、飛行機で攻撃し殺す。列をなして集団で歩いていて隠れる場所もないので効率的だ
八 気分悪い、熊、お前なんてことを想像するんだ
熊 これは実際、七年前のシリア内戦の「人道回廊」でプーチンが命じ、ロシア軍がしたことだ
八 何が人道だっ。人の道に反する。国連軍を派遣しよう。
熊 ロシアは国連の常任理事国で拒否権を持ってるから、国連は何も決められない
八 警察が山口組を抑えるのに、山口組の許可がいるのか?常任理事国って何なん?
熊 正確には安全保障理事会常任理事国、戦争を未然に防ぐ委員会だな
八 止める立場の国が戦争始めてどうする?ロシアを常任理事国から外す決議をしよう
熊 それもロシアは拒否権を持ってるから、何も決められない 
八 国連は永遠に今のままなの?じゃあ拘束力はなくても、多数決を取って国際世論で総スカンを喰らわす
熊 中国は困るだろうな。世界を敵に回したくないし。でもプーチンは気にしないだろうね。今の状況を「国難」って言っているから。被害者意識も相当なもんだ。日本も国際連盟を脱退して戦争に突っ走った過去があるからなあ
八 何とかならないの
熊 話し合いにならないからなあ
八 そうだ、今こそ安倍元総理に説得してもらおう
熊 プーチンと気が合うからなあ
八 26回も会談をしたらしい
熊 ロシアからの独立を求めているシベリアの地域に、日本の資金援助で開発を進めて、プーチンは地域のためにこんなに良くしていますよって、反プーチン派を抑えたってロシア政治の専門の小泉さんが言ってた
八 日本の金でだろ
熊 ウン。資金援助している北方四島でも2020年にミサイルを新しく日本に向けて配備したと国会で立憲民主党が言ってた
八 日本の金でだろ
熊 資金援助はどう使うかわからないからなあ。むしろ安倍氏の敵基地攻撃論や核共有発言は、プーチンにお墨付きを与えそうだな
八 だめだこりゃ。あ、そうだ。プーチンが一人部屋に閉じこもってテレビ会議してる映像をよく見るから、閉じ込めちゃったら?
熊 言い出すやつ勇気いるよな。でも取り巻きはプーチンと同じ考えなんじゃない?
八 なんか良い手はないかなあ
熊 欧米は武器をウクライナに送り、プーチンやその取り巻きの資産凍結をした
八 資産凍結って?
熊 世界経済はドル建てだから、彼らのお金を銀行から出せないようにするんだ。他にロシアへの経済制裁をする
八 どうやって?
熊 ロシアから物を買わない。ロシアに売らない。で、貧しく物不足になってロシアの人々がプーチンに怒り出すのを待つんだ
八 時間かかりそうだな
熊 経済制裁をすると、天然ガスバナジウム、小麦やカニやウニや寿司のネタなどロシアに頼っているものが高騰し、世界中に跳ね返って物価高になり困るんじゃないかという人もいる
八 それがどうした。ウクライナの人って今、発電所を抑えられ、寒さに凍え、食べるものも少なく、死の恐怖に晒されているんだろ。それに比べたら物価高が何だ。悪魔に魂を売り渡しても、今まで通りの贅沢な暮らしが大切だというのか。おらあ、もう寿司は食わない
熊 お前は回転寿司に五年前に初めて行ったきりじゃないか
八 これからは割引シールの物を買う
熊 前からやっているじゃないか。確かに日本人は賞味期限切れでいっぱい捨ててきたのはよくなかった
八 パンがなければケーキを食べよう
熊 お前はマリーアントワネットか?
八 人はパンによってのみ生きるにあらず
熊 キリストだな
八 おかずもデザートも欲しい
熊 そんなことは言ってない
八 パンがなければお米を食べよう
熊 農家の皆様お世話になります。食料自給率を今の37%から80%以上へ
八 灯油を燃やして作ったイチゴなんかいらない
熊 そうだ。季節感がなくなるのが幸せだと思う感受性がおかしい
八 商店は遠慮せず、仕入れが上がった分、値上げしよう
熊 プーチンのせいだと、日本中が腹を立てれば良い
八 プーチンに腹を立てているロシア人もたくさんいるはずだ
熊 ロシアの人々が立ち上がるまで、我々も耐えよう
八 生活が苦しくなったって、それがどうした
熊 強いなあ。お前は慣れてるもんなあ

      令和4年3月11日 

『羅生門論2』一

 私は『羅生門論』でエゴイズム論に疑問を呈した。「おれもそうしなければ、飢え死にをする体なのだ。」をエゴイズム論の根拠にするならば、老婆の登場の意味がなくなる。極限状況はすでに物語の前提にあるからだ。私は、助からんがための老婆の言い訳が老婆を被害者にするというパラドックスと、執筆当時の日本を揺るがせたシーメンス事件の判決と共通する、悪いことをした者に悪いことをしても大目に見られるという老婆およびそれを踏襲する下人の論理に対する皮肉が『羅生門』の核心ではないかと述べた。その後、芥川の「ノート」に書かれた「defence for “rasho-mon”」に私は出会うが、そこにはこう記されている。

defence for “rasho-mon”
 “Rasho-mon” is a short story in which I wished to “verkörpern” a part of my Lebensanschauung-if I have some Lebensanschauung,--゛but not a piece produced merely out of “asobi-mood”. It is “moral” that I wished to handle. According to my opinion, “moral”(at least, “moral of philistine")is the production of occasional feeling or emotion which is also the production of occasional situation.
 『羅生門』は私の人生観—もし私に人生観があるとしたら—の一部を描こうとした小説である。しかし、単に「遊びムード」から制作された作品だというのではない。これこそ私が扱いたかったモラルなのだ。私の考えとは、「モラル」(少なくとも凡人のモラル)は、その時々の状況で生まれるその時々の印象や感情の産物だということなのだ。    (小林訳)

と矛盾するものではなかった。「その時々の印象や感情」は、例の「Sentimentalisme」で物語の冒頭ですでに仄めかされていたのだった。悪を巡る目まぐるしい心の変化も全て「Sentimentalisme」なのだ。「では、おれが引剥をしようと恨むまいな。おれもそうしなければ、飢え死にをする体なのだ。」も「Sentimentalisme」の結果なのだ。老婆の言に触発されたのにすぎない。『ひょっとこ』のMetronome、『虱』のPre'curseur、Pharisienに見られたように、小説における芥川の原語使用は、主題と関連がある。モラルはその時々の状況で生まれるその時々の印象や感情の産物だということが『羅生門』の執筆意図だったのだ。
 そうした目で、『羅生門』と発表の近い『虱』『鼻』を眺め直すと腑に落ちる。『羅生門』はモラルの基準を他者に依存する二者、『虱』は自身の基準を決して変えようとしない二者、『鼻』は変わる多数の他者の基準に依存する個人、という比較ができないか。芥川はそれぞれに冷笑を浴びせている。大正四年十一月から翌年五月にかけて半年の間に発表されたこれら三作を、「モラル三部作」と私は呼びたい。一作目ではモラルの流動を、二作目では固定したモラルの対立を、三作目では流動するにもかかわらず多数であることで得るモラルの優位を描く。
 それらの今日的な意味に私は驚きを禁じ得ない。『羅生門』の、自身の基準を持たず、「みんながしているから」という無責任な理由づけを私たちは何回耳にしたことだろう。『虱』の、自己のモラルが理に反していても変えようとしない姿勢が戦争につながることを私たちは経験した。『鼻』の、原因を解消することでさらに多数から攻撃の対象とされるいじめを私たちは悲しいことに知っている。芥川は未来が予言できたのか。そうではない。世の中は百年前と同じなのだ。
 三作でモラルについて多角的に描こうとしていたと考えると、やはり『羅生門』は極限状況におけるエゴイズムを言ったのではない。そうではなく、「皆がしている」という正当化が、極限状況においても残っていたモラルさえ破壊するということを言ったのである。

 『羅生門』は今もなお高校現場で人気のようだ。
 今年三月に公表された高校の国語教科書の検定結果をめぐり、各教科書会社が文部科学省を批判する異例の事態が続いている。発端は、ある一社の教科書が検定に合格したこと。その後、この教科書が全国の多くの高校で採用されることになり、各社の不満がさらに高まっている。(略)来年度から高校国語に新設される科目「現代の国語」用に、現行シェア三位以下の第一学習社広島市)が作った教科書が、全国シェア16・9%をとり、現行最大手の東京書籍版を抑えて最多だったことが問題になった。(朝日新聞2021/12/9)文科省は「小説の入る余地はない」と説明してきたにもかかわらず、第一学習社が『羅生門』『夢十夜』など近現代の文学作品を多数載せたからである。ライバルである他社から「言っていたことと違う」との批判が高まっている。

毎日新聞2021/9/23)       (一部抜粋小林)

 
 幸田国広氏の研究がある。「定番教材」の誕生 : 「羅生門」教材史研究の空隙 - J-Stagehttps://www.jstage.jst.go.jp › kokugoka › _article › -charによると、昭和32年にはじめて3社に採録されてから平成25年版まで、全19社192種の教科書に採録されている。採録しなかった教科書会社がないほどの人気である。『羅生門論2』では、そうした定番の『羅生門』が、どのように教えられていたのかを遡る。

プーチンの戦争と言う勿れ

 ロシアの戦争ではなく、プーチン個人の戦争だという言い方が最近よく見られる。果たしてそうか?クリミア併合の時に熱狂したロシア人はいなかったのか?クリミア併合で支持率が跳ね上がったというのは世論操作だったのか?プーチンを産んだのはロシア国民だ。プーチンヒトラーも選挙で選ばれた。戦争をしたい人間を自分たちの代表として選んだ責任はないのか?

 プーチンが側近を更迭していると聞く。民主主義の条件は言論の自由のはずだ。異を唱える者を遠ざける、そんなリーダーを選んで良いのか?身の保全を考えて同調する議員を選んで良いのか?対岸の火事ではない。ふるさと納税で、学術会議で、文部科学省で、異を唱える者を排除した、そんな総理を選んだのはどこの国民なのか?忖度する議員を選んだのはどこの国民なのか?幸い、一年で菅が総理の器でないことは、国民の大多数だけでなく与党も認めて彼は政権から去った。日本はまだ民主主義が生きている。しかし戦争の足音はそこまで来ていた。賢い国民が戦争を防ぐのだ。

国防妄想

 どうやって国を守るか。つまるところはハッキングだろう。国によりネットの制限がかけられ、プロパガンダ放送がされ、国民が騙されている国に対しては、真実を知らせる必要がある。私は、自分の心の3分の1は正しい判断ができ、3分の1は愚かで、3分の1はフラフラしているように、人間の3分の1は正しい判断ができ、3分の1は変えようのなく愚かで、3分の1はどうにでも変わると考えている。そして世の中を変えているのがこの最後の3分の1だと考えている。この3分の1の人たちをプロパガンダから解放するには、正しい情報、少なくとも多種の情報が必要だ。情報の制限を解除するには、ハッキングは有効な手段だ。テレビ局をハッキングし、ネットをハッキングし、その国民が知らされていなかった情報を流す。やはりと思う人が3分の1、嘘だと思う人が3分の1、考え直す人が3分の1、世論は変わるのではないだろうか。

 また、恐ろしい方法だが、核の発射スイッチをハッキングできないか。核を持っている国にとってこんな恐ろしいことはない。一刻も早く、核を処分しなければ物騒でならない。考えれば爽快だが、もちろんこれはテロにも使えるし、個人が世界を支配することにもつながるし、地球規模の拡大自殺にも使える。現実は何重にも暗号化のセキュリティーがかかっているし、そうでないと困る。最終発射回線は外部と物理的に遮断されていなければならない。命令を受け最後のスイッチを押すのはどの3分の1なのだろう。ハッキングは最高の国防であるのと同時に、世界の破滅も準備している。