maturimokei’s blog

俺たち妄想族

ウクライナ危機

 武力を先に使った人間が、襲われた人に非武装を要求している。都市をより破壊するために「人道回廊」という名で、ロシアのコマーシャルに使うための人質をよこせと言っている。7年前にプーチンがシリアでやったことを考えると、「人道回廊」の到着先はアウシュビッツにしか見えない。プーチンを許すことはできない。

 経済的制裁をロシアに与えれば、世界中が不況に苦しむことになると言う人がいる。それがどうした。人民はパンがないなら、ケーキを食べれば良いと言ったマリーアントワネットではなく、小麦が高騰し、パンが食べられなくなれば、米を食べればよい。日本は米を増産して世界中に送れば良い。贅沢に捨てていた食べ物を残らず食べれば良い。自転車を使い、早く寝て、太陽とともに生活をして、原油天然ガスの消費を減らそう。それらの輸出に経済の半分近くを頼っているロシアに打撃を与え、ロシア中に反プーチンの嵐が吹くのを待とう。ロシア人であることの誇りを持っている人はたくさんいる。今の状況に耐えられないロシアの方はたくさんいる。「ロシアの春」はきっと訪れる。ウクライナの方々の苦難を思えば、我々の生活の物価高なんて贅沢を捨てれば何でもない。商店は自分たちだけで被らず、遠慮なく値上げすれば良い。日本人の全員が、プーチンに腹を立てることが大切だ。

 エネルギー消費を抑えることは、地球温暖化やマイクロプラスチックによる大気汚染を遅らせることにもつながるが、そうではなく、これはすでに起こってしまった危機への対応である。我々は今世界史のターニングポイントにいる。この暴挙を記す教科書を未来に存在させるために、我々は今すべきことをしなければならない。

小説ワリエワ

 

 私には二つの選択肢があった。一つは音楽が鳴ってもリンクに立ち尽くすことである。しかし、それは同時に抗議の意味を含み、私の本意ではなかった。もう一つは転倒である。それは誰にも証明できずに目的を果たせる。私の目的は一つ。三位以内に入賞しないことである。入賞すれば、大会中の表彰はなくなり、シェルバコワを初め他のオリンピアンに申し訳ないことになってしまう。
 ドーピング検査で陽性と判定された時、信じられなかった。一瞬、いつも飲んでいるナピータクが頭によぎった。スポーツ選手なら誰でも自分専用のドリンクを持っている。ドリンクを共有しないのは、コロナウィルスが流行するずっと前からだ。大会に出場する者にとっては常識だ。会場で誰かが薬物を混入させる危険性があるからだ。練習用のナピータクも、私たち一人一人の体脂肪率や酸素吸収率に合ったものを、個々用に作られているから、絶対に他人の物を飲まないようにと、トゥトベリーゼコーチから注意されていた。私たちの食べ物は全て管理されている。私のナピータクにだけ入れられていたのだろうか、いや、そんなことはない、これは何かの間違いだ。検査の前日に私が不注意で口にしたものがたまたま検出されたのだ。そう信じたい。そう自分に言い聞かせて練習を続けてきた。
 拍手が響く。シェルバコワが終わった。次は最終滑走、私の番だ。バッシングを受けたが、私はショートプログラムを一位通過した。それは私のプライドをかけた滑りだった。不覚にも演技が終わった瞬間、涙を流してしまった。ショートで泣く選手なんていない。私のオリンピックへの挑戦はもう終わっている。今から起こることは決して誰にも言わない。それが私のもう一つのプライドだからだ。
 ボレロが低く始まった。私は静かに滑り出す。四回転サルコウ。見てほしい。私の最後のジャンプ。踏み切る。良い回転だ。着氷。決まった。一番勇気がいるのは最初のジャンプだ。多くのスケーターが最初のジャンプで躓く。ここで成功すれば乗っていける。体調は悪くない。でも、惜しいけれど、これで終わったのだ。あとは、転倒するだけだ。新しい技を始めると転倒はつきものだ。怪我をしない転倒の練習もしてきた。転ぶのはお手の物だ。こんな時に役に立つなんて。次のトリプルアクセルは余裕だからステップアウトしよう。手を着く。コンビネーションの二回目の転びがぎこちなかった。わざとらしかった。もっと上手に転ばなきゃ。コーチにはばれたかな。でも、これで良いのだ。転んで、そして立ち上がる。

 私を映すドローンが飛んでいる。私は何回スピンしても眼球が揺れることはない。時速20マイルで滑走しながら審査員の表情を読み取ることができる。今日は審査員の目に動揺が見られる。そうやって滑っている私を右斜め上からもう一人の私が見ている。いつもと同じだ。

 私がコーチから特別育成選手に指名された時のトルソワの目を思い出す。指名されなかった彼女が悔しがると私は思っていた。でも、そうではなかった。彼女の目の中にある、私を憐れむ色がずっと気になっていた。私は子供で嬉しさばかりだったけれど、彼女はすでに知っていたのだ。今になればわかる。コーチは私たちに言った。あなた達はライバルではない。あなた達は自分の役割を演じるのだと。私の役割をトルソワはその時知っていたのだ。
 ボレロに打楽器が加わった。音量が上がる。リズムがはっきりしてくる。後半だ。フィギュア団体で金を取った時、唯一失敗した四回転トゥーループ。これは成功させたい気持ちもあった。ああ、この失敗はやはり悔しい。あっ、コンビネーションジャンプを成功させてしまった。得意技だから体が覚えている。気持ちに反して、体があらがう。ゆっくり、ゆっくり、もっと技のキレを無くさないと。でも、音楽が鳴ると、氷の削れる音がすると、体が、体が、動く。動く。シンコペーションに体が反応してしまう。レイバックスピンから足換えのスピンへ。回転が上がっていく。速すぎる。でも回る。回る。ああこのまま回っていたい。私はスケートが好きだ。大好きだ。

 演技が終わった。でもこの手は何だろう。最後の音と同時に突き上げた拳。全く今の私の気持ちに似つかわしくない。これほど気持ちと動作とがちぐはぐなものがあろうか。この突き上げる拳も演技の一部として私の体に条件づけられたもの。毎日毎日体に覚えさせたもの。ちょっと笑ってしまう。

 私は氷の感触を確かめながらリンクの出口に向かう。明日からどんな日々が始まるのだろう。わからない。私は何のために滑ってきたのだろう。オリンピックって何のためにあるのだろう。わからない。ただ一つわかっているのは、私はスケートが好き、体がスケートを全力でしたがっているということだ。今日は眠ろう。明日目が覚めれば、リンクに立ちたい。そして思いっきり自由に滑ってみたい。いつまでも滑っていたい。

 

 これは2022年冬季オリンピックフィギュアスケート女子決勝最終演技者の予選決勝における中継放送の彼女の行動と表情、および彼女に関する報道をもととしたフィクションである。

 

(参考報道)

2019年12月9日 世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシアの国家ぐるみのドーピング不正にまつわるデータ改ざんに関して、ロシア選手団を4年間、オリンピックを含む国際的な主要大会から除外すると決定した。なお、個人の参加は認める。
2021年11月27日
 カミラ・ワリエワ(ロシア15歳)がフィギュアスケート女子で世界歴代最高得点272・71点を記録し、GPシリーズにおいて2連勝。
2022年2月7日 
 北京五輪女子団体戦において、ワリエワはフリーで2位に30点以上の差をつけ、ロシアオリンピック委員会が首位に立つ。
2月8日 
 スウェーデンの検査機関が、21年12月25日に行われたロシア選手権でワリエワの検体から禁止薬物のトリメタジジンが検出されたことを報告。前日行われたフィギュア女子団体のメダル授与式が中止になる。
2月14日 スポーツ仲裁裁判所がワリエワが16歳未満の要保護者であることを理由に、五輪出場を認める裁定を下す一方、彼女がメダルを獲得した場合、女子のメダル授与式は行わないことに決定。
2月15日 
 女子ショートプログラムでワリエワが首位に立つ。
2月17日19時
 女子フリー開始。トルソワ(ROC)は、演技後ハグをしようとしたエテリ・トゥトベリーゼコーチに「身をよじって避け「嫌よ。みんな知ってるのよ。」と厳しい言葉を浴びせて、その場を立ち去った。」(2.18スポーツ報知)
 ワリエワはジャンンプで何度も転倒。演技終了直後、欧米メディアによると、トゥトベリーゼコーチは「演技を終えたワリエワに「説明しなさい。なぜ諦めたの?」などと詰問した。」(2.18日本経済新聞

金=シェルベコワ、銀=トルソワ、銅=坂本花織、4位=ワリエワ

2月20日 北京五輪閉幕。

2月21日 ワリエワ練習開始。自身のインスタグラムに投稿。「アスリート人生で最も重要なイベントに導いてくれた方々に感謝したい。私を強くしてくれてありがとう」(時事通信「あなた(=コーチ)はあなたがすることに関する限り絶対的なマスターだ。あなたは単純にトレーニングだけでなく自身を克服する方法を教える。これはスポーツだけでなく人生を生きていくのに役立つ助言」「ファン、家族、友達、コーチ、ロシアオリンピック委員会、チーム全体、祖国、全世界の人々に感謝する。ありがとう。私は永遠に感謝する。私はこれを常に記憶し感謝しながらあなたのためにスケートをするだろう」(2.23中央日報

2月24日 ウクライナ外務省は24日、同国内の複数の都市が攻撃を受けたと発表した。首都キエフがミサイル攻撃を受けているという。ロイター通信が伝えた。ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)などの米メディアは日本時間の同日午後、ロシア軍がウクライナ東部へ攻撃を開始したと報じた。

2月25日 ウクライナのシュミハリ首相は24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにした。(NHK

3月3日 サポリージャ原発、ロシア軍の攻撃を受け火災。(NHK

3月4日 プーチン大統領は、ロシア軍に関する「偽情報」を広めた場合に最長で禁錮15年の刑を科すなどとした法案に署名し、同法は成立した。(時事ドットコム

4月26日 大統領府クレムリンで、プーチン大統領がオリンピックのメダリストを集め勲章を授与。ワリエワ選手について「スポーツを芸術の頂点に引き上げた。これは追加の手段を借りて不正に達成できるものではない」と功績をたたえた。一方、シェルバコワ選手や3つの金メダルを獲得したアレクサンドル・ボルシュノフ選手らが欠席した。(テレ朝ニュース)

モスラの復活2

  クチバシを作る。実はモスラをもう一体買ってしまった。確かモスラは双子だったはずだ。もう一体いてもいいだろう。こっちにはクチバシがついている。それをオス型にしてお湯溶けプラスチックでメス型を作る。本来はクチバシが開閉できるが通常はバネで閉まってる。メス型は口を閉じた状態で作ることになる。このままメス型に流し込んだ。物足らないし、糸の代わりに出す光線を通す空間がない。小さな穴を開けて光線を通すのは難しい。口は開けた方が見た目が良いし、光線を出しやすい。やや開いた状態で固定したものを作ることにする。そのために四分割でクチバシの部品を作り直す。

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下左がクチバシのメス型、下中央は土台のメス型

 

 四つのパーツを再びお湯で温めて合体させる。あとは塗装するだけだ。

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 レーザーは、ゴジラ用のレーザーで、コンパクト化のために不要になったものを使う。大きめだが、モスラの頭に空間はたっぷりあるし、ゴジラを赤レーザーにしたので、青レーザーはモスラに似合っている。糸吐き用のスイッチが余っているので、モーターへの配線を分岐して、糸吐きも可能な状態を残しておく。写真は仮に入れてみたのだが、このままでもいけそうだ。

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 ちなみに、前回真鍮に変えたミニ四駆用のピニオンギアは小さかったが、部品採りした中国メーカーの4輪駆動車のモーターのプラスチックギアは、モスラ用と同じ大きさだったので交換することにする。やはり隙間が大きいとギアを削る可能性は大きくなる。プラスチックギアはペンチと釘で抜けるが、真鍮ギアもうまく抜けるだろうか。まあ、やってみよう。

ゴジラの復活6

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1 電磁スイッチの製作
 エナメル線が来た。噴煙装置を回路に繋ぐと、電圧か電流が落ち込み、回転が上がらない問題を解決するために、噴煙装置電源を別に設け、回路を通さず流すことにした。問題は、どうやってオンオフするかである。そこで、リモコンで電磁石を操作し、磁石鉄芯と、引きつけられる薄い鉄片の離合を噴煙装置のスイッチにしようと考えた。いいアイデアだ。
 ゴジラの気道用に100均で買った曲げストローの切った残りがあるので、巻きつける。規則正しく輪を描くエナメル線が金色に光って美しい。何回巻いていいか分からないので、100回巻くことにする。実験電源を使って試してみる。ストローの中に入れた釘が飛び出たのでびっくりしたが、悪くはない、明らかに反応があるということだ。釘を固定すると、置いた鉄ネジが引き寄せられた。成功。ところが、アッチ!。小指が電磁石に触れたら、無茶苦茶熱いのだ。考えてみれば、ニクロム線と同じ格好をしている。熱いはずだ。これはまずい。ゴジラが内部崩壊してしまう。カバーをつけても、中のストローがもたないだろう。短い時間ならいいか?とりあえずはこの問題は置いて、回路実験に進むことにしよう。

2 実験回路
 実は、どうやらゴジラの一つの回路を壊したような気がする。噴煙装置を繋いで、おかしい、煙が出ないとしつこく回し続けると、突然暴発をはじめ、スイッチを切っても回り続け、次からは何を繋いでも反応しなくなった。ごめん。そこで、負荷を心置きなくかけられる実験用の回路を作ることにした。といっても私は回路を組めない。他のラジコンおもちゃの回路を取り出して使うのだ。昔、我が子用という名目で買った私用の、チャーGという自動車ラジコンがある。1チャンネルで前進後退のみである。これを使おうかと思いながら、今回、アマゾンを物色していて驚いた。あれは何というのか、高専ロボコンで使われる、スライド走行が可能なように斜めにローラーをつけたタイヤを履いている4輪駆動車を発見。ということは4チャンネルではないのか。モーターが4つ、充電池も3つ、LEDがついてコントローラーがついて、なんだこの値段は?ゴジラは6チャンネルと謳っているが、正確には5チャンネルだと私は思っている。つまり、モーターを逆転させて方向転換しているのでこれは2ではなく1と数えるべきだ。オモチャに4チャンネル。しかも、エネループと同じ大きさで3倍高電圧の充電電池。即買った。中国の技術の進歩は凄まじい。我が東大は、私の出身校という意味ではなく、私の母国のという意味だが、ロボコンアジア大会では最近中国に負け続けている。むべなるかな。
 話は逸れるが、このおもちゃ、未来の自動車社会を先取りしている。4輪別々にモーターを制御するので、その場回転ができる。道路にセンサーを埋め込めば、直に電気でモーター制御なので自動運転技術の簡単さはエンジンの比ではない。真横へのスライド走行は乗り心地、ブレーキの効き、道路の傷みを考えると現実的ではないから、ローラータイヤの採用はないが、タイヤを動かす装置としてのハンドルはなくなる。デフもなくなる。加速は4モーター、巡航は1モーターというように四つのモーターを使い分ければミッションも要らなくなるのではないか。機械部品製造技術精度のハードルは下がった。アップル、ソニー自動車産業に参戦するのは当然である。しかし、モーターを動かす電気をどうやって得るか世界はまだ解決していない。私としては、日本は島国だから、潮の満ち干を利用するのが良いと思うがどうだろう。

3 中国製品の傾向
 商品が届いた。リモコンの電池の蓋を開けるのがとても難しい。スライドさせよとの説明があるが、びくともしない。15分やっても無理。シリコンスプレーをかけ滑りやすくしても動かない。中でカラカラ音がするのも嫌な予感がする。よく見ると、電源スイッチが邪魔になってスライドできない構造になっている。部品採りだから壊れるのも覚悟でドライバーでこじ開けた。中を見ると、スライドではなく、単なるハメ入れ、ドライバーこじ開けが正しい。訳のわからない折れた部品が入っていたが、内部に損傷はない。説明書ではAA(単3電池)が指示してあるが、中を開けると AAA(単4電池)と書いてあり、実際に単4電池の大きさだ。操作は簡単で思い通り直感的に動かせる。とても面白い。ただ、リモコンの電源を切るのが難しい。びくともしない。コツをマスターするのに15分かかる。中国製品は発想の面白さ、電子部品を含むコンパクトさでコスパは高い。しかし、スイッチにおいて雑なのが多い。接触不良は当たり前、異様に細い導線、グラグラのハンダ付け、スイッチの筐体の組み合わせ精度の低さ、まるで4、50年前のおもちゃのようで、最先端のオートメーションで作られる部品の精度の高さと極端なほどアンバランスでいつも苦笑してしまう。

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不必要に抜けにくいコネクター。針を2本刺して抜け留めを押し上げてから抜く。

 

 私は、必要な部品がでると、まず今まで使った材料の残りから調達する。ないときは家の中を見回す。利用できるものがなさそうなら、100均やホームセンターで代用品を探す。代用品が見つからないとAmazonで買うが、部品を買うより製品を買う方が安いことの方が多い。不思議だ。しかも、部品採りした残りは他のことに利用できることも多い。例えばLEDが欲しくて買って、切り離して不要になった電源ボックスは、実験用に使える。だが、前述通りスイッチが甘いから、前述のプラマイ逆問題で動かないからといって必ずしも私の配線が悪かったのではなく、実験用電池ボックスがダメだったという、地獄のような日々を送った。というわけで下は、4つ100円のミニタッパに収めた、4チャンネルレシーバーと電池。実に小さい。

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左が実験用4チャンネル回路(3,7ボルト電源内臓)
右が単3四本入り4,8ボルト電源ボックス

 残念ながら、電磁スイッチのエナメルコイルを入れると、レーザーの照度が極端に下がる。下がるだけでなく、電磁石の力も弱い。回路から電流の制限を受けている。失敗だ。考えてみれば、モーターも電磁コイルだった。電磁石スイッチもモーターも結局同じものだ。何と迂闊な。ため息が出る。振り出しに戻った。


 いや、私にはまだ、次の一手がある。

 

 

 

モスラの復活1

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 モスラが家に来た。私はジャンクゴジラの修復をポリシーにしてきた。モスラは所詮脇役だ。しかもマルイモスラの最大の売りは糸吐きであるが、糸缶はもはや製造されず、販売当時の糸缶は中で固まってるものが多いと聞く。糸を吐かないモスラモスラじゃない。でも、脇役は脇役として置いてもいいか、ジャンクで探してオークションに参加すると、相手はすぐ降りた。家に届いたのを見て驚いた。口がない。箱入りで喜んだ私が迂闊だった。でも、つぶらや、いやつぶらな目がかわいい。
 箱入りといえば、私の家に箱入り娘が嫁いできた。未組み立てのゴジラである。私はジャンクゴジラの修復をポリシーにしてきた。未組み立ては所詮転売前提の投機目的だ。私の主義じゃない。少なさを価値にする資本主義的価値だ。そうではない。ゴジラの価値は歩き吠えるところにある、と信じてきた。でも、ジャンクでないゴジラがどんなものか気になってきた。部品が袋に入ったまま開封されていない未組み立てものをメルカリで見つけた。買ってしまった。折り目の美しい箱を開けて驚いた。初めて買ったゴジラの悪臭の元凶であった、体内にちぎって詰め込まれたスポンジが、2枚ともシワひとつなく並べてある。スポンジを除けると中から、21年の歳月を飛び超えた美しきタイムトラベラーが姿を現した。小さな頭、華奢な腕、豊かな腰回り、水滴をはじく艶やかな肌を持った箱入り娘がそこに横たわっていた。私が今まで出会ってきた埃まみれの蜘蛛の巣のへばりついたゴジラとは全く違う。しかも、いい香りがする。元の持ち主は女性に違いない。父親の遺品整理でこれを見つけたのだろう。決して裕福でない彼女はこれを手放した。別れの想いを込めて、彼女は使っている香水を一雫箱に落としたのだ。甘い匂いを閉じ込めておくために、私はその日以来一度も箱を開けていない。
 ブレブレやんか、と後ろ指をさされそうだが、私のゴジラ愛は少しも変わっていないことは誓って言える。

 話を戻す。モスラの口ならもともとプラスチックだから後で作ればいいやということで、念のため電池を入れてみる。006P電池のくたびれたバッテリースナップ線が切れて、ビニールテープがズレて銅線が見えている。新しいものに交換する。電池を入れメインスイッチを押す。全く音がしない。正常なら、スイッチを入れた瞬間だけ電流が流れ、ギアが噛み合う音がする。現存するゴジラの多くは油の固まりと錆のためこの音もしないが、スピーカーがブツッという音だけはするものはある。回路が生きているのだ。私の出番である。スピーカのクリック音もせず、回路が死んでいれば私にはお手上げである。
 逆に、腹が座った。心置きなくバラせる。リンクで伸び縮みはするが、基本は車輪を回して動くだけのシンプルな構造だ。ギアの数もゴジラに比べようもないほど少ない。赤子の手を捻るようなんものだ。幼児虐待は良くないので、これも早晩死語になるかな、と思いながらギアの掃除をしていたら、コツンと音がして、何か転がった。何か落ちたなと探すと、心棒だった。どこのが落ちたのかなと確認しようとして、探すときに机の上に置いた洗いかけのギアがどこに入っていたのか忘れてしまっていることに気づく。笑顔が消える。赤子の手を捻るどころか、いくら頭を捻ってもギアが収まらない。8枚歯10枚歯問題の再燃である。悪戦苦闘の末無事に収まった。昔はジグソーパズルをする人の気が知れなかったが、少しは気持ちがわかるようになってきた。
 モスラはプラスチックギアを使っているので、割れて空転するという記事をネットで見たことがあった。糸吐き用のモーターのピニオンギアである。前述したように糸スプレーが入手できない今となっては、修理する意味がないが、どうせ修理するならと、ミニ四駆用真鍮ギアを買った。このモーターは缶を押し出すためにかなりのトルクがかかる。にも関わらずプラスチックギアにした理由がわからない。実際、走行用のプラスチックギアは左右とも割れていないのだ。割れの原因は年月だけではない。

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左 元ギア、割れた筋が見える  右 新真鍮ギア ややこぶり

 見るからにひとまわり小さい。大きすぎると入らないが、小さくて空転すれば意味がない。とりあえず試す。釘抜きを土台にして金槌で叩き込む。土台は必ず金属でないと、シャフトが電極からズレてモーターを壊す。モーターにギアを叩き込むなんて50年振りではなかろうか。少し緊張するが、どってことない。ケースを組み上げる。実験用電池で直結通電する。ギャリッといってスプレー押しが作動した。やはり新しいピニオンギアが小さくて、相手の平ギアとの隙間が大きいことを意味する。噛み合ってはいるがギリギリの状態なのだろう。しかし、技術の習得には成功した。ひとまわり大きなギアさえ手に入れば完璧に修理できるということだ。

 ちなみに、押し出しヘラは行き止まりなので、モーターに負荷をかけないように、スイッチを自動で切らなければならない。ゴジラは左右旋回用のモーターを切るのに機械的な回転スイッチを使っていたが、モスラには見当たらない。どういう仕組みなのだろう。

 青い線が断線していた。モスラの配線はゴジラと違い、コネクターがない、色分け配線でない。部品をケチったのか、コードの色で操作部位を知ることができないのだ。ただ、赤プラスは守られているので、青はマイナス線だ。電池ボックスのマイナス線が外れているのを見つけた。ハンダ付けする。付かない。おかしい、ハンダメッキできない。線を切って新しい銅線部を出してもつかないし、色が変だ。黄金色をしていない。黒い。ビニール線の中まで黒いのはおかしい。そうか、以前の持ち主がショートさせて線が焼けたんだ。そこで新しい線を使う。不要になったスピーカーコードをとっておいていたので、割いてマイナス線1本だけを使う。電池ボックスから伸びたもう片方は基盤に直接ハンダ付けだから少し緊張するが、ゴジラの修復を始めてからハンダはかなり腕を上げた。
 なんと、前進、右折、左折、首あげ、鳴き、糸缶押し出し、全ての動作がラジコン操作できたのだ。モスラ〜ヤッ、モスラ〜、ドンガンサク〜ヤッ、インドンム〜。回路は生きていた。これで糸缶があれば、、、、
 大丈夫、私には次の一手がある。

 

 

 

ゴジラの復活5

1 気道の確保

 背びれ下にある噴煙装置からのパイプは、最初、ゴジラの延髄付近に開けた穴から口内に繋がっていた。排気抵抗を少なくするためにできるだけパイプを曲げたくなかったのだ。しかし、外皮を被せると、外皮の重さもあり、手振りや首曲げ、咆哮の時にパイプが圧迫されることに気づいた。だいいち、後頭部を気道が通っていることは、敵に背後から襲われた時に致命傷を負う危険性がある。やはり生物のセオリー通り、喉を通らせることにする。喉なら、外皮の引っ張りの影響を受けないし、空間的に余裕がある。懸念は曲げによるパイプの圧迫であるが、私には次の一手がある。折り曲げストローを使えばいいのだ。家にないので100均に行く。100円で80本。そんなにいらない。

 もう一つ問題がある。下顎パーツが邪魔をして口内にストローが入らない。下顎パーツは、ゴジラ頭部の下部に嵌め込まれ、ゴジラが咆哮し上顎を上げるときに、大きく口を開けるように固定されているのだ。しかし、外皮の下顎は喉や胸と一体になっているので、下向きの力が働いているはずだ。顎を外すことにする。顎は、頭部ユニットで挟まれているので、再度頭蓋骨を開く。

2 二種類の頸椎
 実は、ゴジラの頚椎は2種類ある。ネジの位置が違うのだ。写真右は首のすぐ下、左は少し下がってネジがある。おそらく右側がロット1だろう。ネットオークションのコメントで、ロット1は少なく貴重、と見たが私にとってありがたくはない。

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 写真左の方ならネジを取ると頭を首から外せるから修理が簡単なのだが、写真右の方はネジを外しても頭が抜けない。未だにどうやって外すのかわからないのはこの部分だけだ。しかし、困難は技術を上げる。私は既に胴体から頭を外さず、頭蓋骨を切開してギアをはめ直し、再び接合できるまで腕を上げている。経験とはすごいものだ。一度できれば、もうできない気がしない。

3 噴射器の小型化

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上が試作器、下左が最新器、下右は下顎

 試作器は内臓っぽく作ってみた。レーザーポインター筐体半分を切り外しているがまだ大きい。最新器は小ささとシンプルさを目指した。レーザーの中身だけを買った。値段は10分の1。中華製品は安いが、線が細く今にも切れそうでこわい。写真は樹脂で配線を固定済み。外れた場合の付け直しは難しくなったが外れにくいを優先した。下顎にはかつて開けかけた穴がある。

4 偶然の一致なのか
 ストローの内径が太くなったので噴煙がだらしなくなった。そこで、先端の穴を小さくして圧をあげることにする。すぐ、ボールペンの芯が目に付く。なんと、ボールペンの外径とストローの内径がドンピシャ一致したのだ。ちょっと窮屈目で漏れが全くない。一番の恐れはゴジラ内部で煙が漏れることだ。煙は、電子タバコを使っているので、甘い香りがする。ゴジラにはあまり似合わないが、問題はそれではなく、甘いということはベタベタしたものが含まれている気がする。絶対に中で漏らしたくない。それがうまくいったんだなあ、加工したのは電子タバコの出口だけ。バーベキューファンと電子タバコを繋ぐためのパイプは風呂の水を洗濯機に入れるポンプのパイプ。電子タバコからは熱帯魚のエアポンプのパイプを中継してストローからボールペンの芯まで、測ったようにきっちり入る寸法。ちょっとびっくりです。洗濯機用のポンプのパイプを切って使ったので翌朝妻に、いつもと違う、と叱られたが。

あとはエナメル線の到着を待つばかりである。スイッチ用の電磁石を作るのだ。

ここに、いる

 

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                  作詞・作曲 maturimokei

窓の外見える 青い空 飛ぶ鳥
鉛筆の音だけが 響く教室
どこから解いたらいいか 少しもわからない
何が大切なのか さっぱりわからない
だけどそんな私にも わかることはある
それはとてもあなたを 好きだってこと
あなたの声が聞きたくて 私はここにいる
あなたのことが好きだから 私はここにいる


学校行こうとすれば おなかが痛くなる
おかあさんお弁当 つくってくれた
私の悪口 ネットに書いてある
きっとあの娘だけど 証拠がないの
だけどそんな私にも わかることはある
それはとてもあなたを 好きだってこと
あなたの声が聞きたくて 私はここにいる
あなたのことが好きだから 私はここにいる


自分らしく生きると 人は言うけれど
合わせるってダメなの 何が自分らしいの
ありがとうと言うより ありがとう言われる
人になりたいと それだけじゃだめかな
だけどそんな私にも わかることはある
それはとてもあなたを 好きだってこと
あなたの声が聞きたくて 私はここにいる
あなたのことが好きだから 私はここにいる

会えることの幸せ 会えなくなってわかる
恋人繋ぎ手洗い 一人じゃつまらない
みんなが困ってる 初めての出来事
私にできること 誰か教えて
だけどそんな私にも わかることはある
それはとてもあなたを 好きだってこと
あなたの声が聞きたくて 私はここにいる
あなたのことが好きだから 私はここにいる

どんなにつらい時でも 私はここにいる
あなたのことが好きだから 私はここにいる