maturimokei’s blog

俺たち妄想族

プリウスのシフトレバー

 

1 シフトレバー4種

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🔴は固定可能位置 緑線はクラッチやボタン無しで移動可能ゲート

以下、採用車とシフトチェンジに要する動き、つまり誤動作を防ぐ構造を示す。

1 マニュアル=1900年代~ 無数の車種に採用。足のクラッチタイミングと手の直角ゲートという二重三重の条件

2 プリウスHシフト=2015年〜 プリウス(ミライも?)のみに採用。手首の直角ゲート移動のみ

3 オートマチック「P-R-N-D-L」型=1960年代~現在 世界水準。無数の車種に採用。指のボタンと腕の直線移動という二重の条件

4 アクセラJシフト=2002〜2013年 国内ではマツダアテンザアクセラにのみ採用。海外ではジャガーなど。手首と腕と直角移動という二重の条件

※2、4は私の勝手な命名で、採用車にも間違いがあるかもしれないが、ともに車の歴史において少ないと思う。

本稿は、プリウスのシフトレバーの問題点について述べたい。

 

 

 私は車が好きで、20代から40年間以上、国産全メーカーのかなりの車の試乗をしてきた。街で暮らしていたときは新車が出るたびに試乗した。田舎にすみだした今でも、新しいメカニズムが発表されれば、必ずと言ってよいほど町まで出かけて試乗した。決して保守的ではない。クルーズコントロールで、私の意思にかかわらず加速する車のハンドル操作する感覚は、馬に乗って手綱で方向を変える武士になったようで楽しく、ノートe-Powerの、アクセルオフでブレーキング停止まで行える操縦性には感動さえした。アクセラのJシフトもマニュアルとオートマの良さが融合したよいものだと思っている。数々の試乗の中で、怖いと思ったことが3回ある。

 

2 初めてのオートマ(トルコン)試乗

 一度目は初めてオートマチック車に乗った時だ。40年以上前、オートマチックが出始めで珍しかった頃、友達の車を運転させてもらった。停車しようとした時に、私はブレーキとアクセルを両方踏んでしまったのだ。マニュアル車が普通の当時、止まるときは左足でクラッチを踏むのを体が覚えていた。無いクラッチを探し当てた左足はブレーキをクラッチと間違え、右足はクラッチの右にあるのがブレーキだと思って、実際はブレーキの右にあるアクセルを踏んだのである。体が動かなかった。固まって、アクセルから足を離そうとしても、突っ張った膝はびくともしなかった。吠えるエンジン音の異変に気づいた友達たちが数人で車を押さえつけ、何かわめいたが、私はまだアクセルを踏んでいた。結局事なきを得たが、最も怖い思い出である。

 

3 NAVi5

 もう一つは、NAVi5のアスカに乗った時である。1984年、いすゞ自動車が世界に先駆けて成功した、マニュアルミッションの電子制御である。フォルクスワーゲンが2003年にDSG搭載車の販売を始める実に20年前である。NAVi5は画期的であったが、タイムラグが大きく、ガチャガチャのシフトレバーがオモチャの感触で安っぽくイライラしたのを覚えている。CG誌が理想とした「熱いナイフでバターを切る」ポルシェのミッションは触ったことがなかったが、絶対これではないと思った。シフトレバーの先になんの機械的リンクもなく、レバーが独立し、接点で操作している軽さが当時の私には気味悪かった。

 

4 プリウス

 最後三つ目は、プリウスのシフトレバーである。まずどこにあるのかわからなかった。パネル下にちょこんと付いていた。今までの車の位置ではない。昔のコラムシフトより更に遠い所にある。マニュアルミッションのようにゲートを辿って90度曲げながらシフトチェンジする。これは悪くない。ガチャガチャした感じはNAVi5を思い起こさせたが、一番の問題はギアをどこに入れているのかわからないことだ。ニュートラルに入れても、ドライブに入れても、リバースに入れても、全て同じ位置に戻るからである。気持ち悪い。位置を戻す必然性がわからない。セールスマンはパネルで確認してくださいと言う。ギアを入れ変えるたびに道路から目を離してメーター横の小さな文字を探すのは危険極まりない。ミッションの位置を手で軽く触れ確認しながらアクセルを踏むことができない。触れるだけでは無理で、押し込みながら確認するしかない。無駄なエネルギーだ。

 更に問題は、クラッチもボタンも無いのでゲートの移動だけでギアが入れ替わることだ。一方向の力でギアが入れ変わることはなく、どのギアの移動も90度曲げなくてはいけないが、とても軽く指先の力しか必要ない。滑るように移動できる。これが不安だ。ボタンなしのゲートの移動式には、ジャガーマツダがある。マツダのオートマはボタンは無いが、90度曲げながら移動するマニュアル的な動きだ。機械的なリンクを持ち、ある程度の節度ある固さや移動距離がありシフトした位置は固定される。また運転席左というオーソドックスな位置にある。これらはプリウスと決定的に違う。プリウスは電子制御であることを誇示している。それが果たして必要なことなのだろうか。

 

5 フェールセーフ

 

 プリウスのシフトレバーは平面ゲートであっても非常に軽い力で滑るように移動できる。それは美徳だろうか。意図していないポジションに入る可能性はないのだろうか。事故を起こした時、どうなるのだろう。何らかの衝撃を受けた時、人は体を守ろうと手を前に出す。プリウスの運転手または助手席の人の前にはミッションレバーがある。体が前に滑り出た時、無意識に何かを掴んで体を止めようとする。もしつかんだのがダッシュボードにあるシフトレバーなら、レバーは下方向の力を受けドライブに入る。シートから滑りでた体は狭いレッグスペースに入りアクセルを押す。手はますます強くシフトにしがみつく。他のミッションでは起こり得ないことだ。その時エンジンは止まるプログラムになっているのか、試していないので私にはわからない。運転者の意識がなくなりシフトレバーから手が離れた時、シフトレバーはバネでニュートラルに戻っていて、ドライブに入っていた痕跡は消えている。それがプリウスだ。

 また、高齢者が正面衝突して動転した場合、長年乗ってきたマニュアルの操作を体が覚えていることはないのだろうか。反射的にリバースに入れようとした時、操作したシフトレバーはドライブに入る。多くのマニュアルミッションのリバースの位置が、プリウスはドライブだからだ。(上図参照)マニュアルっぽい動かし方であるのに、ポジションがマニュアルとは真逆なのだ。後退しようとしたのに車が前にダッシュすれば、体はシートに押し付けられ、反作用で足は前に滑り出てアクセルを更に踏み込むかもしれない。意図せず加速する動きにさらに運転者は驚き、体は硬直しアクセルから足が離れないかもしれない。以上のことは、一般的なオートマでは起こり得ない。偶然右方向に力をかけてもシフトレバーは動かないからだ。またプリウスしか乗ったことがない人もこんなことは起こり得ない。しかし、ミッションに慣れた人は無意識に誤動作を起こすのではないか。現在ミッションの普及率は数%に過ぎないという(2017年の国内MT比率は2.6%。Wikipedia)が、歳が寄るほど、新しいことではなく、昔のことが蘇ってくるものである。それが人間だ。プリウスの購入者は年配者が多い。何十年とマニュアルミッション車に乗ってきた人である。現に私は再びミッションに乗りはじめたのに、数十年乗っていたオートマの感覚で停止してノッキングさせて苦笑したことがある。車の運転は無意識で行っている部分は多い。パニックになった時にいつの自分が出てくるか自信がない。体が覚えてしまったことが何なのか、普段は意識できない。それが人間なのだ。自信がないなら免許を返しなさいと人は言うかもしれない。しかし、自重1.5トンもあり、人を殺す可能性のある乗り物なのにわざわざ特殊なミッションにする必要があるのか。他車から乗り換えても違和感がないようにするのが普通だ。ブレーキとアクセルを左右入れ替えた車は受け入れ難い。ハンドルは国で左右違っても、アクセルとブレーキの位置は世界共通だ。プリウスは、シフトの位置で前後アクセルとブレーキの位置を入れ替えた、といえば言い過ぎだとしても、他のミッションに比べて、独特なのに、フェイルセーフの要素が少ない。運輸省はなぜ認めたのか。不運が重なり不幸な事故が発生しないことを祈る。

 

6 OBD点検義務化の意味するもの 

 仮に、事故を起こした後も問題だ。シフトレバーが5ポジションとも同じ位置にあるプリウスでは、現場検証でギアがどこに入っていたか確認できない。マニュアルシフトでは当然わかるし、普通のオートマなら素人でも視認できる。プリウスではコンピュータの記録を辿ることでしかできない。事故車のコンピュータを警察独自で解析できるのだろうか。押収しているのだろうか。渋谷交差点事故ではトヨタ社が解析してプリウスに異常はなかったとニュースで聞いた。ニュートラルに入っていたのか、ドライブなのか、リバースなのか、大切なことだ。人の証言は当てにならない。人は自分の記憶さえも書き換えて信じ込んでしまう、良くも悪くも。記憶は当てにならない。パニックになれば尚更だ。

 令和3年10月1日より自動車に備えられた車載式故障診断装置(OBD)の点検が義務付けられた。車載式故障診断装置(OBD)とは、車両に搭載されたコンピュータにより制御される各種装置の状態を監視するとともに、故障の有無を自己診断し記録する装置である。トンネル内の猛スピードの異常さに、ダイアナ妃暗殺論が囁かれた時、電子制御スロットルなら外部から暴走させることが可能だと言う意見があった。本当にできるのかは知らないが、自動運転による事故はアメリカで既に訴訟になっている。日本におけるコンピュータの異常による事故は、オリンピックで自動運転していたトヨタ『eパレット』』が選手に接触し、同乗していた社員が書類送検されたことしか私の記憶にはない。死亡事故については大抵は操作ミス、ブレーキアクセルの踏み間違えの判決が大半である。多くの被害者が出てやっと腰を上げるのが今までの国やり方だったのに、公道ではない選手村で、販売もされていない車の接触事故だけが理由か私は知らないが、国土交通省が早めに対策をし、不幸な事故を未然に防ごうとするのはとても良いことだ。ただ、正常なコンピューターを積むということと、誤操作をしにくい車の構造にするということは別の問題だ。

 

7 終わりに

 

 後発のアクア、カローラ、クラウンは同じハイブリッドだが、プリウスレバーは使われていない。正しい判断だと思う。次期プリウスが一般的なシフトレバーを搭載することを期待する。条件反射が意思とは違う行動を生み、その結果としてパニックに陥り体が硬直する経験をした私は、そういう状態が起こりにくい、起こっても被害を拡大しない製品を生産すべきだと強く思っている。

 渋谷母子死亡事故を起こした被告が運転していたのはプリウスだった。私の知人が妻を誤って轢き殺した時に運転していたのもプリウスだった。原因は踏み間違えなのだろう。踏み間違える前に何が起こったのか。私はそれが知りたい。

 

追伸4月20日

トヨタの新車bz4xは、押し回し式の新ミッションを採用した。手が当たるだけでは入らない安全なミッションだ。トヨタは今のミッションは良くないと思ったのだろう。しかし、新ノアボクシーは旧のプリウスミッションだ。新ミッションを採用してほしかった。